ダイエット, 体の整形

【医師解説】糖質制限ダイエットの全て。カロリー制限ダイエットよりも効果的か?

「糖質制限ダイエット」は最近のダイエットの中でも流行りの一つでしょう。
「米やパンやパスタは食べちゃいけない!」
「ご飯を食べると太る」
などよく聞きますね。
ただ、糖質制限ダイエットは誤解されている点があることも事実です。
そのため、今回糖質制限ダイエットの真実を伝えるために医師の視点から詳しく説明していきますね。
記事の全てを読むだけで糖質制限ダイエットの専門家になれるような内容です。

糖質制限ダイエットの理論的なところとは?

糖質制限ダイエットをすすめている方の理論は以下のようになります。

糖質摂取
→血糖値上昇
→インスリン分泌促進
→脂肪合成の促進・脂肪分解の抑制
→脂肪の蓄積
→太る
→太る原因・根源は糖質だ!
→糖質制限
→やせる

という、理論です。

多くの方々も信じているこの理論。

この単純明快な理論は正しいのでしょうか?

結論から言うと正しいです。
ただ、正しいんですが単純に糖質だけが悪者、インスリンだけが悪者というわけではないんです。
これらの疑問点を解いていけば糖質制限ダイエットに関しての正しい理解を得ることができるでしょう。

糖質だけがインスリン分泌を促すのか?

糖質だけがインスリン分泌を促すのかということを説明していきます。
このことに関しては非常に参考になる文献がありました。

以下の文献です。

「An Insulin Index of Foods:The Insulin Demand Generated by 1000-kJ Portions of Common Foods”」
<1>

この文献は
6項目、38食品のインスリンスコア、グリセミックスコアを比較した文献です。

①朝食用シリアル(オールブラン、コンフレークなど)
②タンパク質を多く含む食品(牛肉、卵、チーズなど)
③フルーツ(りんご、オレンジなど)
④炭水化物を多く含む食品(パスタ、白米、白パンなど)
⑤パン製品(ドーナツ、クロワッサンなど)
⑥菓子類(ポップコーン、ポテトチップスなど)

(インスリンスコアは
食品を摂取したあとにインスリンがどれだけ上昇するかを表したもの。
グリセミックスコアは
ブドウ糖50gを摂取後2時間までの血糖値上昇率を100として、食品の炭水化物50gを摂取した際の血糖値上昇を相対値で表したものです。)

ざっくり言うと
インスリンスコアやグリセミックスコアが高い食品はインスリン分泌が多い!!
ということになりますね。

また、今回はそれぞれの食品を240kcal摂取し白パンは100と比較値とされています。
240kcalの比較なので、現実の食生活に重ねて考えやすいと思います。

<さて結果ですが、以下の通りです。>

①朝食用シリアル 
インスリンスコア57% グリセミックスコア59%
②タンパク質を多く含む食品
インスリンスコア61% グリセミックスコア54%
③フルーツ
インスリンスコア71% グリセミックスコア61%
④炭水化物を多く含む食品
インスリンスコア74% グリセミックスコア88%
⑤パン製品
インスリンスコア83% グリセミックスコア77%
⑥菓子類
インスリンスコア89% グリセミックスコア65%

これは貴重なデータだと思います。
糖質のインスリンスコアやグリセミックスコアが高いのは当然かと思いますが、
意外にも糖質(炭水化物を多く含む食品)以外の食品もそれなりにインスリンスコアやグリセミックスコアがあるということが分かります。

また、下記のような記載もありました。

・However, some protein and fat-rich foods(eggs, beef, fish, lentils, cheese, cake, and doughnuts) induced as much insulin secretion as did some carbohydrate-rich foods (eg, beef was equal to brown rice and fish was equal to grain bread).

「タンパク質が多く含まれている食品と脂質が多く含まれている食品のいくつかは、炭水化物が多く含まれている食品よりもインスリン分泌反応が高い!」

以上より

糖質はインスリン分泌を亢進させるのは間違いないです。
ただ、インスリン分泌を亢進させる食品は糖質以外にもたくさんあるということが言えます。

インスリンはダイエットにとって本当に悪者か? 

ダイエットの悪者と考えられているインスリン。
ダイエットにとって本当に悪者なのかどうかを考えていきます。

まず、インスリンの肥満作用とは何か考えてみましょう。
インスリンの肥満作用としては
1 脂肪の合成促進
2 脂肪分解抑制
があります。
<2>
これは何十年も前から確認されている確固たる事実なので
糖質制限を主張している人が
インスリンは脂肪をためこむ作用があるため肥満ホルモンであると言っているのも分かります。

ただ、忘れてはいけないのは
インスリンは食欲を抑える効果がある
<3>
ということです。
また、インスリンが多いほど満腹感が高くなる傾向があります。
<4>
満腹感が増して、食欲を抑えてくれれば食事量も減ってダイエット効果があるかもしれません。

以上より

インスリンは脂肪をためこむ作用、肥満作用があります。
そのため、ダイエットにおいえて悪者的な側面があるのは事実でしょう。
ただ、インスリンは食べ過ぎを抑えてくれる効果もあり
単純にダイエットにとって悪者とは言い切れない
ということです。

太る原因はインスリンだけか?

インスリン以外に脂肪蓄積作用させるホルモンはないのか?

まず、「インスリンには脂肪蓄積作用がある」、これは事実です。
ただ、脂肪蓄積作用があるのはインスリンだけではありません。

結論から言います。

インスリン以外だと
ASP(Acylation Stimulating Protein)は脂肪蓄積作用があります。
ASPは聞いたことある方がある方はあまりいないかもしれませんね。

おそらく、医師の中でも聞いたことないという人が多いでしょう。

ただ、実はASPはわりと最近の学術論文でも話題になっています。

ASPは肥満に関係すると言われ
<5>

肥満や2型糖尿病などメタボリックシンドロームの治療における標的分子として注目されています。

急性冠症候群(心筋梗塞とか)患者の肝臓のマーカー・メタボリックのマーカーとASP上昇レベルの関係を調査した論文では、

結論には以下のように書かれています。
<6>

「ASP, independent of IR, may contribute to a vicious cycle of hepatic lipogenic stimulation and GGT release promoting atherogenesis.」

「ASPはインスリン抵抗性には関係なく、肝臓の脂肪合成促進とアテローム発生を促がすγ-GPTの分泌という悪循環を引き起こしているだろう」

ASPは脂肪合成促進作用があるということですね。

以上より、

インスリンは脂肪蓄積作用があります。
ただ、インスリン以外にも脂肪蓄積作用させるホルモンはあります
そのため、太る原因はインスリンだけではないと言えるでしょう。

糖質制限ダイエット VS カロリー制限ダイエットの信頼できる研究データ

糖質制限ダイエットは世界中から注目されているため、海外では科学的にその効果が詳細に調べられています。

すでに、多くのエビデンスレベルの高い研究結果(信頼できる研究データ)が出揃っています。

そのため、糖質制限ダイエットに関して

エビデンスレベルの高い糖質制限ダイエットに関して確固たる結果・結論が出ている研究結果を紹介していきます。

「体重減少効果と循環器疾患のリスクを「糖質制限」と「バランスの良い食事(カロリー制限ダイエット)」で比較した:システマティックレビューとメタアナリシス」

「Low carbohydrate versus isoenergetic balanced diets for reducing weight and cardiovascular risk: a systematic review and meta-analysis.」
<7>

肥満している成人を

・糖質制限ダイエット
・バランスの良い食事

をランダムに分けて体重の変化を比べた代表的な19の研究のまとめです。
研究実施国はアメリカ、イギリス、ノルウェー、オーストリア。
バランスの良い食事は糖質45~65%、脂質25~35%、たんぱく質10~20%
糖質制限ダイエットは糖質45%未満
対象者は18歳以上の肥満者(BMI26以上)

結果は、

3~6ヶ月後の結果は

・糖質制限ダイエットは2.65~10.2 kgの体重減少効果
・バランスの良い食事は2.65~9.4 kgの体重減少効果
・糖質制限ダイエット VS バランスの良い食事で体重減少効果に有意差はない。

1~2年後の結果は

・糖質制限ダイエットは2.9~12.3kgの体重減少効果
・バランスの良い食事は3.5~10.9kgの体重減少効果
・糖質制限ダイエット VS バランスの良い食事で体重減少効果に有意差はない。

結論としては、

Trials show weight loss in the short-term irrespective of whether the diet is low CHO or balanced in terms of its macronutrient composition. There is probably little or no difference in weight loss and changes in cardiovascular risk factors up to two years of follow-up when overweight and obese adults, with or without type 2 diabetes, are randomised to low CHO diets and isoenergetic balanced weight loss diets.

「研究結果は糖質制限ダイエットとバランスの良い食事(カロリー制限ダイエット)の体重減少効果を示した。
2つのダイエットの体重減少効果と循環器疾患のリスクは2年間のフォローアップの結果、肥満者・2型糖尿病において明らかな差はほとんどない。」

として締めくくられています。

以上より

「糖質制限ダイエットはカロリー制限ダイエットと同様に非常に有効で安全なダイエット法である。
ただ、80年以上の歴史があるカロリー制限ダイエットと比べ歴史も浅く、太っていない健常人が長期的にやって健康面などプラスになるかという点に関して若干疑問が残る。」

というのが、私の考えです。

というのも、今回の研究結果からは

摂取しているカロリーが同じならば、どの栄養素からカロリーをとろうと体重変化にほとんど違いはないということが証明されているからです。

糖質制限をしているかどうかは体重の変化にはほとんど無関係です。
体重の増減はカロリー摂取量の問題であって、
糖質を制限しているかどうかは本質ではないということが言えます。

私が思うのは、あらゆるダイエット法の欠点は、食事という人生の楽しみを制限してしまうということです。
だから、自分で継続しやすいダイエット法・健康な食事にたどりつくのが一番だというのは間違いないでしょう。

そのため、糖質制限ダイエットをうまく行うことは、人によっては食べる楽しみを大切にしながら行うことができますし、ありでしょう。
自分にとってほどよく適度に行うことができれば良いですね。

【参考文献リスト】
<1> Susanne HA Holt et al:「An Insulin Index of Foods:The Insulin Demand Generated by 1000-kJ Portions of Common Foods”」American Journal of Clinical Nutrition 1997 vol. 66 no. 5 1264-1276
<2> インスリン – Wikipedia
<3> Pliquett RU et al:The effects of insulin on the central nervous system–focus on appetite regulation. Horm Metab Res. 2006 Jul;38(7):442-6.
<4> Pal S et al:The acute effects of four protein meals on insulin, glucose, appetite and energy intake in lean men.Br J Nutr. 2010 Oct;104(8):1241-8. doi: 10.1017/S0007114510001911. Epub 2010 May 11.
<5>Heikki A. Koistinen et al:「Plasma Acylation Stimulating Protein Concentration and Subcutaneous Adipose Tissue C3 mRNA Expression in Nondiabetic and Type 2 Diabetic Men」
Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology.2001; 21: 1034-1039
<6>Jumana Saleh et al:「Plasma Gamma-Glutamyltransferase Is Strongly Determined by Acylation Stimulating Protein Levels Independent of Insulin Resistance in Patients with Acute Coronary Syndrome」Disease Markers Volume 35 (2013), Issue 3, Pages 155–161
<7>Naude CE et al:Low carbohydrate versus isoenergetic balanced diets for reducing weight and cardiovascular risk: a systematic review and meta-analysis.
PLoS One. 2014 Jul 9;9(7):e100652. doi: 10.1371/journal.pone.0100652. eCollection 2014.

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