体の整形

【医師解説】アクアフィリングは安全!危険性・発がん性のリスクまとめ。

最新の豊胸術のアクアフィリング・アクアリフト豊胸を知っていますか?

色々な美容クリニックの広告では

持続期間が3~8年、柔らかい、98%が水分、完全に吸収される、欧州CEマーク取得

等書かれており、非常に魅力的ですね。

ただ、
本当に分解されるのか?
FDA承認がとれていないのではないか?
発がん性はないのか?
など、安全性を心配される意見もあるのは事実です。

そういった背景がございますので、今回

アクアフィリング・アクアリフト豊胸の発がん性・安全性に関して私の意見を交えて詳しくまとめていきます。

(なお、アクアフィリング豊胸とアクアリフト豊胸には大きな違いはありません。メーカーは異なりますがほぼ同一の製剤と考えても大丈夫です。)

そもそもアクアフィリングとは?

アクアフィリングは98%が水分、2%がポリアミドでできたものです。

線形ポリアミド同士が水素結合をして3次元空間構造を形成し、

その空間に生理食塩水を閉じ込めています。
<参考記事1>

そのため、ほとんどが水分でポリアミドが微量という構造なのでとても柔らかいわけです。

また、アクアフィリングを構成するこのポリアミドの3次元空間構造は生体内で徐々に分解されていくと言われています。

ポリアミドって何なの?

アクアフィリングのうち2%はポリアミドです。

では、ポリアミドってなんでしょうか?

ポリアミドとはアミド結合したポリマーの総称です。
<参考記事2>

つまり、ポリアミドはあくまで総称であり、個別の名称ではないんです。

総称とはなんでしょうか。

これを分かりやすく言えば、

イモリやヤモリの総称が両生類といったようなところです。

そのため、「ポリアミド」という情報だけでは成分の正確な特徴は分かりません。

で、アクアフィリングのポリアミドの原料、ポリマーは何かと言うと、

「アクリルアミド」と「メチレンビスクリルアミド」であり

これらが重合してできたものです。

そして、重合の仕方によって性質がまったく異なるようです。

(ちなみに、悪名高きアクアミドは並行鎖同士が共有結合することで立体構造をとる網目状ポリマーであり性質がまったく異なるわけです。)

生理食塩水で分解されるのか?

基本的には、線状ポリマー同士が水素結合により立体構造をとっており、この水素結合は水分子で壊されます。

これは生体内では緩徐に、また3倍量程度の水を加えることで急速に起こります。

水素結合が外れ、線状ポリマーの状態になるまでが分解です。

分解された線状ポリマーは貪食され尿中に排泄されるとされ、この分解~排泄のことをもって生体分解性があると言えます。

組織写真でも免疫細胞がポリマーを貪食していることまでは確認されています。

貪食している組織写真のデータもあるわけですし、色々な美容クリニックの広告には分解されると書いてあるのはそういうわけでしょう。

しかし、貪食~分解~排泄の一連の流れの組織写真などのデータがないので100%生体分解性がある、排出されるとは言えないでしょう。

このあたりはまだ議論の余地がありそうですし新たなデータが求められます。

また、

アクアフィリングが生理食塩水を加えることで分解されるという聖心美容外科さんの実験がありますが、

聖心美容外科さんのアクアフィリング水溶実験。
http://www.biyougeka.com/contents/bust/aquafilling/

この実験結果ですと
「生理食塩水で急速に分解されているのではなく粘稠度が一時的に下がっているだけ」
と考える方が自然でしょう。

ただ、粘稠度が下がっているだけだとしても

もし注入後に万が一何か問題が起きたときに

術者がきちんと生理食塩水を注入し吸引して排出するなど責任を取ることが出来るのであれば安全と言えるでしょう。

(医師に最低限、脂肪吸引やヒアルロン酸豊胸術の豊富なスキルが求められます。)

FDAの認可が取得できていないけど大丈夫?

アクアフィリング豊胸はFDAの認可が取得できていません。

が、欧州CEマークは取得しています。

欧州CEマークはFDAのような医薬品としての安全性を確認した承認ではありませんので

欧州CEマークを取得している=安全

というわけではまったくありません。

しかし、短絡的にFDA認可取得できていない=危険

というわけでもないです。

美容医療という分野においては、FDAで認可されていないものも多く使われています。

これは、最先端の材料・技術が多いというのが理由としてあると思います。

例えば、溶ける糸リフトに関してはFDA認可が取得されているのはシルエットソフトのみです。

しかし、現実にはショッピングスレッド、J-リフトなど様々なFDA認可されてないものが多くの美容医療機関で使用されています。

つまり、FDA認可されていないが国内で標準的に使用されていて安全なものが多数あるということです。

そのため、アクアフィリング・アクアリフト豊胸を批判する理由としてFDAの認可をあげるのであればそれは批判材料としては適切ではないと言えるでしょう。

で、安全なのか?

アクアフィリングの水素結合は水素結合は水分子で壊され、

これは生体内では緩徐に、また3倍量程度の水を加えることで急速に起こると言われ

2004年から7年間の臨床研究が行われ、

安全性・持続性について確認されているそうです。
<参考文献1>

ただ、アクアフィリングには重合しきれないアクリルアミドモノマーが微量存在するようです。

アクアフィリング豊胸の発がん性に関するディスカッションが存在する理由としては

まさにこの重合しきれないアクリルアミドモノマーです。

アクリルアミドって何?

アクリルアミドはアミノ酸が、加熱されたとき(120℃以上)に生成する物質です。

そのため、ポテトチップ、フライドポテト、食パンの耳、トーストの焦げた部分、揚げ物の焦げた部分、ほうじ茶、麦茶、中国茶、ココア、コーヒー、かりんとう、アーモンド、クッキー、ビスケット、クラッカー、芋けんぴ、きな粉、カレー粉、インスタントラーメン

など様々な食品に含まれています。

というか、アミノ酸は、普通に穀類や野菜等に含まれるものなので、

人類はたぶん、火を使った調理が始まった頃から、アクリルアミドを食べ続けてきたと言えると思います。
<参考文献3、4>

アクリルアミドに発がん性はある!?

アクリルアミドの発がん性を考える上では

国際がん研究機関(IARC)が公表している発がん性に関する分類が非常に参考になります。

その分類によると

アクリルアミドは分類2Aの「ヒトに対しておそらく発がん性がある」に分類されています。

さて、ではこの分類を詳しく見てみましょう。

1 人に対して発がん性がある
アルコール、アルコール飲料、たばこの喫煙、ヒ素、アスベスト、ベンゼン、ホルムアルデヒド、アフラトキシン等
2A 人に対しておそらく 発がん性がある
グリシドール、アクリルアミド、PCB、ニトロソジエチルアミン、ディーゼルエンジン の排ガス等
2B 人に対して発がん性 を示す可能性がある
フラン、コーヒー、漬物、ガソリンエンジンの排ガス等
3 人に対する発がん性に ついては分類できない
コレステロール、お茶、オイゲノール、サッカリン、原油等
4 人に対しておそらく 発がん性でない
カプロラクタム(ナイロンの原料)

という分類になっています。
<参考記事、3・4)

そのため、この分類に沿って考えると

アクリルアミドの危険性は

お茶やコーヒー<アクリルアミド<アルコール

と考えることができます。

そのため、国際がん研究機関が作成した分類表からは

「アクリルアミドはお酒より安全。」

ということが言えます。

アクアフィリング豊胸にはアクリルアミドモノマーがどのくらいあるのか?

重合しきれないアクリルアミドモノマーがどれくらい存在するかというと

アクアフィリング100ccに対して0.04mg程度

となります。

では、アクリルアミドの0,04mgという量が多いんでしょうか?少ないんでしょうか?安全なんでしょうか?

それについて考えていきます。

アクリルアミドはどのくらいの量まで安全なのか。

アクリルアミドの量を考える上で重要なデータがあります。

FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)において、

2005年及び2010年にアクリルアミドの評価が行われており、

次のような報告がなされています。

・平均的な摂取量は、体重1kgあたり一日1μgであり、高摂取群では、体重1kgあたり一日4μgと推定される。(2005年、2010年)

→これを分かりやすく言えば、体重50kgの人で平均的には一日0.05mgで多いと一日0.2mg食品から摂取しています。
このくらいの摂取量レベルでは少なくとも問題ないということです。

・遺伝毒性及び発がん性を有する化合物の暴露マージンとしては低く、健康への懸念を示唆するものである。(2005年、2010年)

・食品中アクリルアミド濃度を減らす努力を続けるべきである。(2005年)

・明らかな暴露を受けた労働者における発がん率の増加の関連を示す疫学的証拠が得られていない。(2010年)

つまり、

大量にアクリルアミドを摂取した労働者でも発がん率の増加を示すデータはない。

アクアフィリング豊胸に含まれている量は日常的に食品で摂取しているくらいの量であり、問題ないレベルである。

ということが言えます。

まとめ

以上より、以下のことが言えます。

・アクアフィリング豊胸の発がん性に関して議論になっているのは、微量の重合できていないアクリルアミドの存在。

・アクアフィリングに含まれる重合できていないアクリルアミドの量としては、普段の食事で摂取している量よりも少なく安全な量。

・アクリルアミドの発がん性のリスクはお茶やコーヒーより高くアルコールより低いレベル。

・大量にアクリルアミドを摂取した労働者でも発がん率の増加を示すデータはない。

つまり、

厚生労働省・農林水産省・国際がん研究機関・JECF、メーカーが公表しているデータを見る範囲では、

科学的な評価の上で

アクアフィリング豊胸の「発がん性に関しては安全・安心」と言えると私は考えます。

(現時点で公開されている情報で判断する限りです。)
(長期的な経過での偏位・乳瘤・漿液腫・血腫や健康被害への影響などは不明です。)

最後に

アクアフィリング・アクアリフト豊胸の発がん性に関して私は安全・安心という意見ですが、

発がん性が100%否定できないというのも紛れもない事実です。

これは、法律の専門家や研究をしていた経験のある方はすぐにピンとくるかもしれないのですが

「発がん性がない」ということを証明することは、まさに「悪魔の証明」だからです。

つまり、「起きないこと」や「存在しないこと」を証明することは困難ということです。

なぜなら、「ある」ことを証明するためには一例を挙げれば良いだけなのですが、

「ない」ことを証明するためには、世の中の森羅万象を調べ尽くさなければならず、それは不可能に近いからです。

具体例を挙げれば、

「霊が存在しないという証拠は無い。ゆえに、霊は存在する」

「宇宙人が存在しないという証拠は無い。ゆえに、宇宙人は存在する」

「超能力が存在しないという証拠は無い。ゆえに、超能力は存在する」

などがあります。

そのため、「発がん性はない」とはとても言い切ることはできません。

ただ、私は科学的な評価の上で発がん性に関しては問題ないレベルであると考えられるため

繰り返しにはなりますが、「発がん性に関しては安全・安心」と考えます。

追記

どんな豊胸手術であってもゼロリスクはありません。
シリコンバック豊胸や脂肪注入豊胸やヒアルロン酸豊胸など全ての豊胸術においてリスクが伴います。
私個人の考えとしては、
神経の温存が確実にできて、仕上がりが良いアクアフィリング豊胸は豊胸術のオプションの一つとして有用だと考えます。
しかし、医師によって様々な見解が当然あると思います。
この方法が絶対良いと断言することは誰にもできませんので、どんな豊胸術が良いか考えている方は医師の診察を受けると良いと言えるでしょう。

【参考記事】
【1】新しい豊胸用注入剤 アクアフィリングとは?(解説)
【2】ポリアミド Wikipedia
【3】農林水産省 食品に含まれているアクリルアミド
【4】アクリルアミド Wikipedia
【5】厚生労働省 加工食品中アクリルアミドに関するQ&A
【6】食品中の「アクリルアミド」 – カルビー

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